ライブハウスの出演方法

1. ライブハウスやイベントの選び方

ライブハウスでライブを行うには、大きく分けて次の3種類があります。

①1つ目は、ライブハウス自体が企画をしてアーティストを集めて行う「ライブハウスが主催するライブ」です。この場合、ライブの予約(ブッキング)担当者である「ブッキング担当」や「ブッキングマネージャー」と呼ばれる方と出演条件の交渉を行います。

②2つ目は、外部のイベント企画会社やプロモーターがライブの企画・制作を行い、会場としてライブハウスをレンタルする「イベンターが主催するライブ」です。外部のイベンターにはプロの企業や個人、時にはバンド自身がその役割を果たすこともあります。イベントの規模によって事情が大きく異なりますが、こちらもイベンター側の担当者と出演条件の交渉を行います。

③3つ目は②を自分達でやってしまう自主企画イベントです。こちらは別の記事にまとめます。

①は出演したいライブハウスに直接申し込めば良いのですが、ライブハウスのキャパは数十人~数千人と幅広い規模が有ります。規模によって条件が変わってきますし、出たくても出られない所も有ります。最近は少なくなりましたが、昔はライブハウスのオーディションに合格しないと出られない所が多かったです。ほとんどのライブハウスがHPを持ってますのでそこから申し込む形が一般的です。

②はインターネットで募集しているところも有りますが、口コミや知り合い経由が多いかもしれません。

いずれにしても出演したいイベントが有れば主催者を調べてみるところからですが、自分達のスタイルに合ったものを探す必要が有ります。ロックバンドなのか弾き語りなのか、ソロでカラオケなのかなどです。ジャンルがゴチャ混ぜのイベントも有りますがなるべくスタイルが近いイベントに出るのがオススメです。

ちなみにHPやX(Twitter)を公開してると主催者側からお誘いを受ける事も有ります。基本は営業なので「ライブハウスから誘われた!」と喜ぶのは勘違いですが良い条件なら検討の余地は有ります。

2. 出演交渉

担当者が決まったらまず、音源やプロフィールなどの資料を求められると思います。リハーサルを録音したものでも良いので、なるべく良い音の音源と、どんなアーティストか伝わるプロフィールは事前に用意しておきましょう。この資料を元に担当者はアーティストに合うイベントを選んでくれます。

最初に決めるのはイベント概要、日時、持ち時間、ノルマ、バック(ギャランティー)などの条件です。

日時については担当者から候補日を提示される事が多いですがこちらから希望を出す事も可能です。ただ一般的に平日に比べて週末は条件が厳しくなる事が多いです。これは週末の方が動員を見込めるアーティストが多いので必然的にライブハウスの使用料金が高くなるという事です。

持ち時間は、ステージ上で演奏をする時間です。

ノルマとバックはセットになってる様なものですが、ノルマは出演料と考えると分かりやすいです。チケット販売においてこの金額分を達成できなかった場合、アーティスト側に不足分の補填が求められることになります。逆に、このノルマを上回る売上を達成できた部分については、アーティスト側に利益が還元される仕組みとなっています。これが「バック(ギャランティー)」です。要は売上から出演料を差し引いた利益を分配する、という形です。

バック(ギャランティー) の条件として50%バックや70%バックあるいは100%バックといった具合に設定されます。当然、この割合が高ければ高いほど、アーティスト側のメリットは大きくなります。過去の実績や集客力などによって変わってきます。

代表的な条件例:ノルマ10枚、11枚目~50%バックの場合
チケット代が2,000円だとするとノルマは 2,000×10=20,000円
チケットを3枚売ったとするとアーティスト側は20,000-6,000=14,000円をライブハウスに支払います。
チケットを15枚売ったとすると15-10=5枚分(10,000円)がプラスになるが、そこから50%バックなので10,000×0.5=5,000円がアーティスト側に返ってくるという事です。

<ポイント>
好条件で出演するには、主催者とのコミュニケーションは重要です。
対バン探しに困ってる時などに急遽頼まれて穴埋めをしたりすると好印象を持たれますが一番強いのは集客力のあるアーティストです。ノルマを払えばOKという感じでライブ後に「今日はお幾らですか?」と財布を出す出演者をよく見ますが集客を頑張らないアーティストは上にはいけません。趣味でやるなら自由ですがライブハウス側としても、より集客の有るアーティストに出演してもらいたいので動員力は何より大事です。
動員の少ないアーティストは動員の多いアーティストと対バンしたいと言いますが、動員の多い側からすると少ない所と対バンするメリットが有りません。動員が多いアーティストと対バンしたければ自分達の動員を増やすしか無いという事です。
出演順に関して、1番目と最後(トリ)で条件が同じ場合が多いです。一般的に順番が後ろほど格上という扱いになってますが最近のライブハウスではお目当ての出演者が終わったら帰られるお客様も多いので、動員が多いアーティストの直前というのが一番人気だったりします。ノルマが同じでも出演順によって良い位置というのは有るので、やはり動員力が重要になってきます。

3. 告知

という訳でライブが決まったら重要なポイントは「宣伝・告知活動」です。SNSへの情報掲載は基本中の基本で、Facebook、X(Twitter)、Instagramなど複数メディアでの告知が不可欠です。告知用画像や動画など宣伝コンテンツも意識した方が良いでしょう。しかしSNSの告知だけでライブハウスまで足を運んでもらうのは相当難しいです。多くのアーティストが、チケットをほとんど売れずに赤字になることも少なくありません。

これはアーティストの考え方やスタイルにもよるので敢えてやらないという方針も有りですが、最も効果の有るのは個人対象への直接告知になります。LINEなどによる友人知人への個別連絡を網羅的に実施します。「知っていたら行ったのに」と言われないように、積極的に情報を伝えます。アーティストから直接連絡をもらったから行く気になったという意見も有ります。やりすぎると嫌がられますが直前のリマインド(追加告知)も大切です。一昔前はDMというハガキを送付したものですが今はもっと便利なツールが有るのでどんどん活用すべきだと思います。

友人でも、最初のライブには来てくれるかもしれませんが、2回目、3回目と続くと来てくれなくなるのが一般的です。忙しい日々の中で、時間とお金をかけて会場まで来てもらうことは、非常に高いハードルです。チケット代を無料にしても来てくれないことからも、集客の難しさが伺えます。この状態を当たり前と受け入れるか、どう抜け出すかで、アーティストの道は大きく分かれます。趣味でやるのであれば自由ですが、上を目指すなら、どうすればお客さんに来てもらえるのかを真剣に考え、努力する必要があります。

<ポイント>
良いライブをすれば動員が増えるという考え方は半分正解で、半分間違っています。どんなに素晴らしいライブをしても、観客がいなければその価値は伝わりません。まずは集客をして、その観客に向けて良いライブを展開することが重要です。集客と良いライブは常に平行して進める必要があります。

4. 良いライブの作り方

良いライブを作る事・・・これも難しいです。すべてのアーティストが悩んでます。正解は有りません。
ただ演奏に関しては確実に上達をする方法があります。それはリハーサルを録音をする事です。時間が有ればすぐにその場で全員で聞いて下さい。オリジナル、カバー、関係無く自分達の演奏を客観的に聞く事は何より大事です。演奏中は自分の事で手一杯になって他の音を聞く余裕が無い人も多いと思います。お互いの演奏を聞いて他のメンバーが何をやってるのか、どういう歌を歌ってるのか、自分がどんな演奏をしてるのか、など気付くことが沢山有るはずです。時間が無ければ各自持って帰ってじっくり聞いてみて下さい。修正点を連絡しあって課題を作って次回のリハーサルでは、どこを改善するかをキッチリ決めてからスタジオに入って下さい。ライブ直前には映像も撮って動きのチェックもして下さい。こういうリハを繰り返せば確実に上達します。

なんとなくスタジオに入って順番に曲をやって、単なる演奏ミスなのかそもそもコードの認識間違えなのか、あやふやな状態のまま次に進んでいくバンドは絶対に上手くなりません。

あと初心者のリハーサルは余計な音が多いです。特にギタリストは音作りという名目で弾き続ける人が多いです。リハーサルというのはメンバーが集った時しか出来ない作業をやる所で、個人練習をする所では有りません。時間を掛けて音作りをしたいとかデカい音で気持ちよく弾きたいのであればバンドリハの前に個人でスタジオに入って準備をして下さい。リハ中に余計な音で会話が妨げられるのは非常に迷惑です。

<ポイント>
セッティングと片付けは普段から出来るだけ早くする練習をしておいて下さい。後述しますが本番の時はセッティングの速さは凄く大事になってくるので毎回のリハーサルは良い練習になります。

本番直前にはゲネプロ(ゲネ)を行います。これはドイツ語の「Generalprobe(ゲネラールプローベ)」の略で、本来はステージ上でセットも組んで照明なども本番同様に進める通し稽古の事を指しますが、そこまで出来るアーティストはなかなか居ないので、一般的にはリハーサルスタジオで本番同様に進める最終リハの事をゲネプロと呼んでいます。リハーサルを重ねてきて本番直前にはこの通し稽古は絶対に行って下さい。この時はオープニングSE(登場する時の音楽)から始めてメンバーの登場~1曲目の入り方~曲間のMC(喋り)~エンディングの退場の方法などまで、本番と全く同じ様に進行して下さい。これが出来ていない状態で本番に進むと確実に失敗します。ゲネは本番同様なので、本番で着る衣装や靴、出来ればメイクもした状態で行って下さい。試着をしてサイズがピッタリでも実際にステージで動くとなると全く話が変わってきます。ステージ用の高いヒールを履いたら動けなくなった、袖がきつくてギターやドラムが演奏しにくかった、汗でメイクがグシャグシャになったなどやってみないと分からない事が多数出てきます。

<ポイント>
普段からの心構えとして、リハーサル中にトラブった時に演奏を止めない癖を付けて下さい。例えばギターの音が出なくなったり、弦が切れたりした時に演奏をストップしてませんか?本番では余程の事が無い限り演奏は止めてはいけません。いかに何事も無かったかの様にトラブルを修正するかが凄く大事です。これは個人練習の時から徹底して下さい。ドラムがスティックを落とした時、演奏しながら落ちたスティックを拾うのは不可能なので、すぐに予備のスティックを取って演奏を続ける練習を普段から心がけて下さい。

5. 本番当日

当たり前の事ですが時間は守りましょう。事前に送られてきたタイムテーブルには入り時間やリハの時間が書かれてます。
会場に入った時の挨拶は「おはようございます」です。これは業界のルールで朝昼晩、夜中でも「おはようございます」です。

一般的には会場に入るとスタッフさんから曲順表2枚(音響用、照明用)、前売り予約リスト表を渡されますが、曲順表は自分達のリハーサル前までに提出して下さい。曲順表は事前に書いていく、もしくは送っておくという方法も有りますが、あまり細かい要望を書いてもすぐに対応するのは難しいので分かりやすい内容が好まれます。

対バンのリハーサルと本番の順序には主に「順リハ」と「逆リハ」の2種類があります。順リハでは、リハーサルが②③④①の順で行われ、本番は①②③④の順序です。これに対し、逆リハでは、リハーサルが④③②①の順で行われ、本番も①②③④の順序です。逆リハのメリットとしては、後から出るバンドから順にリハーサルを進めることで、機材を順番に設置し、本番が終わるごとに前から機材を撤去できる点があります。ただし、最後にリハーサルするバンドは待ち時間が長くなる可能性があります。一方、順リハは待ち時間が均等になりますが、機材の出し入れが複雑になることがあります。
どちらもリハの最後は本番トップのバンドが入ります。これはリハの後そのままの状態で本番を始められるからです。
どちらかと言うと逆リハの方が多いと思います。

対バンにおける転換時間は凄く大事です。エフェクターボードを準備したりドラムのペダルを組んでおいたりなど、自分たちのリハーサル時間までに客席で出来る事は先に準備をして下さい。いかに早く自分たちのやりやすい環境を作れるかはライブの良し悪しに大きく関わってきます。一般的に転換時間は10分から15分に設定されています。これには前のバンドの機材撤去時間も含まれるため、実質的なセットアップ時間は6〜7分程度となります。そのため、普段のリハーサルから転換の練習をして、迅速にセットアップできるように準備しておくことが重要です。

本番当日のリハーサルは練習をするタイミングでは有りません。ここでは主にモニターバランスを確認していかに自分達のパフォーマンスを最大限に出せる状態を作るかがポイントです。サウンド面での注意点はまず自分の音と他の音のバランスです。生音とモニターの音とのバランスなどは会場によって聞こえ方は違うのである意味永遠の課題です。さらにステージ上を動いた時、例えば左右反対側に行った時に自分の音が聞こえないという事が無い様にバランスを取っておく必要があります。特にツインギターやコーラスなどはしっかりバランスを取っておかないとキレイなハーモニーは出せないです。ライブハウスによっては天井が低くて立ち上がってスティックを上に向けると照明に引っかかるとか、ライトの角度によって譜面が見えないなど現場で初めて分かる事も多いです。これらの事を30分程度で全部チェックするのは至難の業なので最初から完璧にこなすのは難しいです。この辺は経験がものを言ってきますが、ホーム的なライブハウスを決めるのも一つの方法です。同じ環境で何回かやれば徐々に分かってくるのでまずはホームで経験を積み徐々に色んなライブハウスでやると違いが分かって対処しやすくなると思います。

ほとんど場合、その日対応してくれる音響さんや照明さんはあなた達の事を知りません。楽曲がどういう曲調でどういうバランスが正解かを知らない状態なのであまり細かい要望を出すのはナンセンスです。どこまでやってもらえるかなども徐々に分かってきますが、余裕が有れば客席に降りて演奏を聞いてみて下さい。ボーカルが降りるとハウリングを起こす可能性が有りますが、最終的にお客さんが聞く音、見え方のチェックは大事です。

具体例です。
リハの持ち時間が30分の場合
転換10分
単音チェック 5分
曲チェック 10分
オープニングSEや登場のチェック 5分

この様に30分だとあっという間です。
曲はフルでやると時間が足りないのでワンコーラスを数曲などチェックしたいポイントを決めておくのが理想です。

リハーサルから本番までの時間は、自由行動となりますが、楽屋の使い方には暗黙のルールが存在します。出番直前のアーティストが優先されるため、それ以外の時間は別の場所で待機やメイクなどを行う必要があります。また、機材や個人の荷物の管理には注意し、楽屋泥棒や機材の破損には十二分に気をつけましょう。

<ポイント>
対バンのリハは良い勉強になります。どんな機材を使ってるのか?どんなセッティングをしてるのか、どういうリハの進行をしてるのか、など出来れば全バンド見て参考になる所はどんどん取り入れていきましょう。初対面の対バンでも機材の事を質問したりすれば新たな発見も出来るし仲良くなったりも出来ます。

ドラムは特に出順を気にして下さい。同じドラムを使い回す場合本番で直前のドラマーがどんなセッティングをしてるかをチェックしておくと、自分のセッティングにする時にどこを修正すれば良いか事前に分かります。
例えば自分たちが③の場合、②のバンドをチェックしておくという事です。

本番に関しては目の前のお客様に楽しんでいただく事が何より重要です。本番で最高のパフォーマンスを出すには事前の準備をしっかりする以外に解決策は有りません。

本番後は担当者と精算になりますが、その日のフィードバックや今後の計画などの話が出ると思います。もしライブを定期的に続けていくならライブ後のこのタイミングで次回のライブを決めるとその日のステージでは告知出来ないので、出来れば本番前に次回ライブの事まで話し合っておくのも有りです。

<ポイント>
ライブ後は物販タイムになりますが、是非対バンのグッズや陳列方法などもチェックしてみて下さい。良いアイデアがもらえると思います。

<まとめ>

ライブハウスでの出演を成功させるには、適切な準備と計画が不可欠です。自分たちの音楽スタイルに合ったライブハウスを見極め、効果的なリハーサル、集客戦略の策定、そして本番当日の臨機応変な対応が求められます。また、他のアーティストとの協力や、スタッフとの良好な関係構築も、成功への道を開く重要な要素です。

この記事を通じて、ライブハウスでの出演が、アーティストとしての能力を磨き、観客と直接つながる素晴らしい機会であることを実感していただければ幸いです。最後に、ライブハウスでの出演は、時に挑戦的で難しいものかもしれませんが、それぞれの経験から学び、成長していくことが何よりも価値あることです。皆さんの音楽活動が、次のライブ、次の成功へと繋がることを心から願っています。